スクラッチは、ビジュアルでプログラミングの考え方を身に付けることが出来る、大変優れたツールです。

操作が簡単なのに、高度なプログラムを組むことができ、保存できたり共有できたりと、ディスカッションもできちゃいます。

そんなスクラッチですが、やはり限界はあります。

限界まで遊びつくすには、相当の時間がかかるので、長く楽しめるツールでもありますが、スクラッチに慣れる前に80%くらい習得したら次に行きたいなぁと考えていました。

 

そこで先日。

試しにテキスト言語に触れてもらいました。

 

触れてもらったのは、小学5年生の男の子。言語は、Processingです。

Processingは、簡単なコードで視覚的に面白い映像を作ることが出来る、ビジュアルに特化したテキスト言語です。

詳しくは、おいおい述べるとして、本日はテキスト言語に触れた子どもがどのように反応し、それをみた大人(僕)がどのように感じたかを記録します。

 

「こういうプログラミング言語に興味ある?」

僕は、そう言いながらソースを男の子に見せました。

男の子は、

「ハァ?無理無理ぃ。無理ー!」

と言いました。

 

「絶対無理じゃない!アルファベットとか記号を一つずつ打つだけだ。簡単だよ!」

と言って、無理やりやらせてみました。

 

全部で10行くらいの簡単なコードです。

とはいえ、初めてだと全くわからないので、気乗りしないのは大人も同じでしょう。

 

途中で投げ出すかなぁ、とも思いましたが、意外と懸命に一文字一文字打ちます。

実は、このコードによって何が実現されるのかは、伝えていませんでした。

ただ、コードを打ち込むだけ。

モチベーションをもてない状況で、どのように反応するのかをみたかったのです。

 

思ったよりも時間はかかりましたが、休むことなく打ち込んだ彼は、

プログラムを実行する前に、こう言いました。

 

「訳わかんないけど、これを打った自分がすごい!」

 

なんと、コードを書き上げた事に充足感を覚えるんですね!

 

「ハァ、やっと終わった・・・」

 

ではないんですよ。打ち込んだ自分を肯定して、讃えていました。

そこに関心する僕。

 

「じゃぁ、実行してみようか」

と促し、プログラムを動かしてみました。

ごく簡単なプログラムなので、先ほどの充足感が萎んだらどうしようと心配でしたが、彼の反応は、

 

「すごい!僕がこれを書いたなんて?!」

 

と嬉しそう。

すぐに別の子を呼んで、自慢してました。

呼ばれた子も

 

「すげー!」

「ネ申!」

「天才!!」

 

などと絶賛し、男の子はニヤニヤが止まりません。

 

ただコードを真似して打っただけなので、内容は理解していません。

言ってしまえば、誰でも出来る事ではあります。

 

しかし、それを最大限、喜んでくれる姿は微笑ましいものでした。

が、それは同時に恐怖へと繋がるのです。

 

男の子は、褒められたのが嬉しかったのかすぐに

 

「次はどうする?」

 

と迫ってきました。

テスト的に触れてもらっただけなんですけど、彼としては楽しかったようで、もっとやりたがっているんですね。

 

もちろん、次のプログラムを渡しました。

今度は、自主的に取り組むように、僕は何も言わずに見守りました。

 

いくつかの記号の打ち方を訪ねてきましたが、先ほどよりも短い時間で、彼は組み上げました。

 

周囲の子たちも、彼の新作を楽しみしており、視線を注ぎます。

出来上がったコードは完璧でした。

写本のような作業なので、完璧である事は当たり前に思うかもしれませんが、今回初めて触ったのですよ!

 

それにただの写本を要求しただけなのに、座標・変数を理解していました。

座標はスクラッチでもやったので兎も角として、変数はスクラッチのそれとは扱いが違います。

うーん。すごい。

 

出来上がりを人に見せ、自分でも楽しんだ後、やはり次を要求してきました。

テキスト言語に対する恐怖心は皆無でした。

 

僕は、今作った二つ目の作品に、色を変える課題を出して見ることにしました。

色を変えるコードは教えてあげましたが、色コードは教えず、緑を探せと言い残しました。

 

さすがに突き放しすぎた課題で、酷かなあと思いましたが、数分して

 

「できたー!」

 

の声。

 

僕は恐怖を感じました。

子供の成長に対してです。

 

あっというまに抜かれそうです。

そうなったら、先生としては失格!?

 

できたー!の声を聞いて、周囲の子もProcessingに興味を持ったようでした。

「できるかな?」と試しに触れさせて見たのですが、パンドラの箱を開けてしまったようです。

 

貪欲な彼らの好奇心は、オトナが考える世界の限界や常識を上書きし、新たな世界を作って余るほどのエネルギーを持っていると感じました。

同時に、彼らのそのような好奇心を刺激する役割を僕らはもっとしていくべきなのだろうとも思いました。

 

Processingにハマるこもいるかもしれないし、Scratchにハマり続けるかもしれないし、Pythonにハマるかもしれないのですが、

僕らが、「これにハマりなさい」という事は、おこがましい行為です。

 

僕らは世界を譲ってしまうくらいの覚悟で付き合うのがいいと思いました。

その覚悟をすることで晴れ晴れしくもあるかもしれませんが、その手間にある「僕の存在価値」が揺るがされる恐怖を感じたのでした。

 

よーし!もっと頑張るぞ!!!

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