今回取り合えるのは、ドイツです。

現在ドイツでは3 つの連邦州(バイエルン、ニーダーザクセン、メクレンブルク = フォアポンメルン州)のみがいくつかの学年でコンピュータの授業を必修化していますが、ほとんどの州では、プログラミングやITリテラシーの教科「Informatik」は必修科目ではありません。
ワードプロセッシングやインターネットの使用などの技能中心の入門コースや、他の科目の授業でインターネットを利活用できるようにするための広範囲にわたるメディアトレーニングしかないのが現状です。
コンピュータプログラミング教育に関して、子供たちの将来の生活や仕事に不可欠とされているため、コンピュータ情報リテラシーを発達させるべきだという共通の理解はあるそうです。
しかしながら、多くの州ではコンピュータ教育の内容についてはまだ協議が行われているようで、今後具体的な導入方法などが検討されていく段階にあります。

このあたりは、日本でも理解はあるものの協議段階という事で非常に似ています。
ドイツの教育システムは、全16連邦州それぞれが独立して教育方針を定めるため、コンピュータプログラミングに重点を置くかを含めカリキュラムに関しては州によって大きな違いがあります。
最初に教科「Informatik」が導入されのは、2000年代初めのバイエルン州で、後期中等教育での必修科目に導入されました。
(教科書の発行日から推測すると 1990 年代初頭から教科「Informatik」が教えられるようになったようです。)
Informatikの目的について、これを必修化しているニーダーザクセン州を参考にすると、

「コンピュータサイエンス教育は児童・生徒たちがこうした技術を使ったシステムを責任を持って使えるようにするためのものだ。これらの情報ツールを使って問題解決を行うことで、システムの可能性、限界、メリット、リスクを学ぶことができる。また、コンピュータサイエンスの手法は他の分野での問題解決にも利用できる場合がある」

とされています。
また、ヘッセン州中等学校のカリキュラムによれば、

「コンピュータサイエンス教育の主要な目的は、情報コミュニケーションシステムに対処する実際的、方法論的、社会的、個人的能力を教育することにある。それにより生徒は等しく活動的に社会生活に参加できるように、また情報社会に備えた学習、労働、個人的生活を送れるようになる」

とされています。

社会適応能力として、身に付けると優位なスキルであると考えられていますね。
こうした認識が共通認識となっているのであれば、ドイツ全体で取り組んでいく可能性は大いにあります。
■位置付けられている学校種・学年
現地ヒアリングでは位置付けられている学校種や学年は州によって異なるが、一般的には教科「Informatik」のいくつかの授業は中等教育の第 9 学年から始まり、2-4 年かけて行われています。

位置付けられている学校種・学年

 

■指導内容
≪ニーダーザクセン州の例≫
獲得が期待される能力は以下の専門的な分野に分類できる。

・処理関連分野
構造化とモデリング化
実装
コミュニケーションとプレゼンテーション
説明と評価
コンピュータシステムをツールとして使用すること

・コンテンツ関連分野
情報とその表現
アルゴリズム
コンピュータシステム
コンピュータサイエンスと社会

さらに上記 2 分野を統合した能力も期待されているそうです。
特にプログラミングという記述が見当たらず、もっと基本的な構造の理解が中心のようです。

評価方法
≪ニーダーザクセン州の例≫
具体的なトレーニングの成果については、生徒が個人またはグループで制作した制作物を評価。
最終成果物だけでなく開発過程や設計図書も考慮されています。
制作物には、例えばプログラム、設計図書、グラフィックス、ムービー、構造データなど。

以下のような口頭、筆記、実施技術などにより評価していきます。
クラスでのディスカッションへの貢献
口頭試問
筆記による提出物
課題の特定の手法や処理への適用
プロジェクトワーク
プレゼンテーション
パートナーとの作業あるいはグループワークの結果とプレゼンテーション
コンテストなどにおける結果・成果
解決すべき課題もあります。
最も大きな課題は、何が基本的な IT 教育であるのか、といった基礎概念が IT 教育者の間で定まっていないことです。
例えば、Windows の Office をベースにすることを望むもの、プログラミングに集中すべきとするもの、プログラミングを完全に拒否するもの、Office とプログラミング両方を教えるべきとするものなど様々な考えがあります。
また、IT教育者が高く評価されないうえに、授業だけでなく IT 機器のメンテナンスまで責任を負うため労働時間が多いという問題もあります。

解決すべき課題にもあるように、何が基本的なIT教育であるのかは、日本でも議論の真っただ中。
ドイツでは、ITやパソコンの構造的な理解を中心にしている印象がありますが、今後は変わっていく事でしょう。
確かにWindowsのOfficeの方が、社会でよく使うスキルのように思いますし、プログラミングを覚える事で多様なスキルを身に付ける事が出来るとも考えられます。
こうした議論がどのように変化していくのかは、日本でも参考になりますね。

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