海外のプログラミング教育事情、2カ国目はエストニアです。

エストニアは、ラトビア・リトアニアで構成されるバルト三国の一国。

 

2012 年 9 月に Tiger Leap Foundation (2013年にHITSAに統合)によって “ProgeTiiger” というプログ ラミング教育推進プログラムが開始されたました。

現在、プログラミング 教育の導入・実施については学校及び指導者の判断に委ねられているそうで、義務教育化する予定はないようです。

ProgeTiigerは、「Informatics」という選択教科を作り、その中でプログラミングが扱われています。

この教科を使うか使わないかは、学校単位で決めていいのだそうです。

取り組んでいる学校では、ロボットプログラムや ゲームプログラムを用いて、プログラミングに興味を持たせる活動に重点を置いているところが多いのだそう。興味を持たせる活動は、大変重要です。苦手意識を持つと学習意欲が低下しますから。

 

エストニアでプログラミング教育を行うに至った背景には、企業がプログラマー確保に苦戦しているからという理由があります。

これは日本も同様ですね。

 

エストニアのITへの取組はソビエト連邦時代にさかのぼります。

エストニアがソビエト連邦に含まれていたころ、コメコン経済(経済相互援助会議)という政策が1949年に施行されます。

これは1947年にアメリカがヨーロッパ諸国の戦後復興を支援し、共産主義の拡大を阻止しようとしたマーシャルプランに対抗したもので、ソビエトがポーランドやチェコスロバキアやハンガリーなどと手を組み、経済協力や技術協力しましょう!という政策でした。

 

超訳すると

「アメリカが俺たちの成長を邪魔しようとしているから、みんなで手を組んで巨大な力をつけようぜ!」

という政策です。

 

この政策では、ソビエト連邦(多数の国によって構成される国家)に含まれる各国に産業が割り当てられます。

 

超訳すると

「お前はこの分野の担当な。お前はここな。そんでお互いに得意分野伸ばして支え合おうな!」

という取組です。

 

こうしてエストニアは、情報通信を産業としていく事になるのです。

ITの礎をソ連時代に築いたのち、1991年にソ連から独立。

国家とそいてIT とバイオテクノロジーに資本を集中し ていくことを決定しました。

独立後、どのインフラの整備よりも先にインターネットの環境整備を優先したという逸話もあるくらいです。

また、現在マイクロソフトの子会社になっているスカイプは、エストニア生まれだったりします。

 

IT基盤の強力なエストニアは、日本でいうところのマイナンバーを2002年に始めていますし、「e-Estonia」というシステムによって、選挙・会社登記・税申告など行政手続きや、市民生活にかかわる多くをネット上で完結出来るようにされています。

選挙投票もオンラインですよ!すごい!

日本の行政手続きはとても手間なので、見習いたいところですねぇ。実際に経団連の方々や大前研一氏もエストニアを視察に訪れているそうです。

 

IT大国エストニアというわけですが、技術者不足に悩まされ、教育にも重点がおかれます。

それが、「Informatics」というわけです。

 

エストニアで考えられているプログラミング教育の目的は、プログラミングを通して、批判的思考や問題 解決能力、創造力や協調性を育成することだそうです。

先に取り上げた英国と同じような内容になっており、日本のプログラミング教育の目的とも違和感はありません。

 

ただし、エストニアの教育体制では、現場に権限があり、どのような授業を行うのかは各学校ごとに違うそうです。カリキュラムも学校独自のものがあったりします。

そのためプログラミング教育の在り方についても、学校毎に任されているので、プログラミング教育の目標は定かではありません。

「Informatics」というカリキュラムに関しては以下のような目標設定がなされています。

  • コンピュータを用いて情報を検索、 処理、分析し、テキストを編集して表現する
  • ICT を用いる際に生じうる、健康状態やセキュリティ、個人情報保護への脅威から、いかにし て身を守るかを理解する
  •  ICT を活用して、効果的な学習環境を作る
  • バーチャルなコミュニティに参加し、オンライン環境を活用して、知的財産権の保護に従いながらデジタルデータを公表する

 

指導内容や教材では、やはりスクラッチがありました。

他には、「Lightbot」というアプリケーションやLEGO Educationが使われています。

 

指導者は、プログラミング教育専任の指導者がいる場合と、数学など他教科の指導者が教える場合があるそうです。

プログラミングの指導者研修は HITSA によって推進されています。

 

学習評価もまた学校によって違うそうですが、通常、各学習者の達成課題や成績のコメント等を 長期にわたって管理するオンライン環境 “e-portfolio” が用いられているそう。

 

エストニアには、ベーシックスクールと呼ばれる7歳から15歳までの学校と、16歳から18歳までのアッパーセカンダリースクールがあり、選択科目としてプログラミング教育及びICTリテラシー教育がなされています。

ベーシックスクールとアッパーセカンダリースクール

 

今後の課題として、指導者が不足している点と、国が明確な指導方針を規定していないため、学校や指導者に指導内容が依存している事が挙げられます。

調査内容についても、「学校毎に違う」という記述が多く見られ、一貫した教育にはなっていないのかもしれません。そのため、英国編よりも情報が少なめです。

 

ITを自国の強みとして強化させ、進んだ取り組みが出来ているエストニアでも、IT人材不足は起こっていました。

エストニアの子供たちが、ITを学び、人材不足を解消したときが楽しみですね。

いやぁ、日本は本当に遅れています。。。(この連載の決め台詞になりそう・・・)

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